古の文化が息づく奥能登。田の神様をもてなす「あえのこと」

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“Real Japan”を体感できる場所。

奥能登で取材していたときに、とある外国人の方が言いました。「能登はリアルジャパンだ」と。目の前に広がるのは都会で見たビル群ではなく、原風景。「本物の日本がここにある」といった感じでしょうか。

石川県の日本海側に突き出た半島が「能登半島」。奥能登はその先端に位置します。奥能登にはマクドナルドがありません。吉野屋もなければ、TSUTAYAも、スターバックスもタリーズもありません。東京だと各駅周辺に当たり前にありそうなものが奥能登にはないのです。

過疎化が著しい地域であり、移住定住者を呼び込むPRが積極的に行われていますが、「出ていく人 > 入ってくる人」の差は歴然として、いくつかの集落は数年後には消滅してしまうのではないか、とも言われています。

能登の自然(里山里海)は、「世界農業遺産(※1)」に認定されています。世界農業遺産って何?って言われたときに、言葉で説明するのが正直難しいです。わかりやすく説明できるとその価値を表現しやすいと思いながらも、能登に住んでいるとなんとなくその意味がわかってきます。(※1 世界農業遺産については農林水産省のサイトに記載されています。)

能登が世界農業遺産に認定されている理由として美しい自然が挙げられますが、「先人たちが築いてきた、自然を尊い、感謝する」という姿勢も理由のひとつです。

五穀豊穣を祈る伝統行事が多く、今回紹介する「あえのこと」はその代表格。「田んぼの神様」をおもてなしするのです。「あえのこと」は「あえ=饗(もてなす)」、「こと=お祭り」から由来している呼び名で、ユネスコ無形文化遺産にも認定されています。

あえのことは、毎年12月5日と2月9日に行われます。12月5日は稲作を守る田の神様を家に招き入れ、1年の豊穣に感謝します。2月9日は春に向けて、神様を田に送り出し、豊穣を祈願します。

一家の主は姿の見えない神様をあたかも人間のように家に招き入れます。田の神様は「目が見えない」と言われており、田んぼから家に招き入れるときも、お風呂に入れてあげるときも、足元に注意して神様を誘導します。

そして、「ご馳走」でおもてなし。私はご縁があって、かれこれ5年以上あえのことを撮影していますが、その風習を観光客の方が熱心に聞いているのが印象的です。

寒さが厳しい能登の冬。田の神様にもきっと想いは届いたでしょう。自然を敬い、感謝する。今年も五穀豊穣を願って、春の訪れを待ちわびています。

古から続く能登の伝統文化。「本物の日本」が能登にあります。